顧問先に関わる士業間の連携の重要性

先日、医療機関の顧問先様をご紹介頂いた保険代理店の方と打合せをしました。

この方とはそれなりの頻度で定期的に打合わせさせて頂いており、税法・医療法にも精通しているため、話が早くて色々と助かっています。

お客様の顧問士業や保険会社との連携は比較的重要で、そのあたりの連携が緊密な方がお客様にとっても有利に働くことが多いです。

顧問先を顧問するにあたり、税理士と連携する士業等についてまとめました。

保険会社との連携

保険会社の方は通常、法人が契約している保険だけでなく、その法人の理事長など個人で加入している保険も関わっていると思います。

理事長がある程度年配の方の場合、医療法人の出口や次世代への引継ぎなど、網羅的に把握しなければなりません。

ゆえにお客様に寄り添う保険会社の方は、不可欠な存在です。

逆に保険会社の営業の方が、その法人の試算表や個人の預金予測などを配慮せずに、顧問先との簡易な話し合いだけで保険加入を勧めることがあります。

医療法人であれば、資金繰り、税法、医療法は勿論のこと、その医療法人及び理事長個人や家族にどれほどのメリットがあるかを総合的に鑑みて、勧める保険を見定めなければなりません。

売上が上がりそうというヒアリングだけで、大型の保険契約を一方的に勧めるようなケースがあり、実際それがお客様にとってほとんど不毛な保険であったり、加入させた後のフォローをまるでしない方には、戦慄を覚えることすらあります。

そのような保険会社にとっては、口煩い税理士は鬱陶しいのかもしれません。

ただ、3者間で意思疎通が取れていれば、関係者全員にとって有意義になるだろうなと思うケースは結構あります。

やたらと保険加入を促すだけで、その後のケアを一切しないような保険会社とは関係を見直すことを勧めます。

社会保険労務士との連携

税理士は、社会保険労務士とは連携が必然となります。

日々の給与計算を社会保険労務士が行っているのであれば、源泉所得税計算で社会保険労務士からのデータ提供が必要になります。

年末調整の際は、給与台帳を社会保険労務士から預り、税理士が調整計算し、再度社会保険労務士へその結果を伝える流れとなります。

基本的に仕事が明確に分かれるため、深い関係になることはあまりありませんが、互いに必要な存在であることは間違いありません。

給与計算や社会保険手続を税理士事務所が一手に担っていた時代もありますが、それは過去の話です。

診療所に勤務する従業員は、診療所を支える柱であり、それが故に、毎月の給与計算や家族にまで影響する社会保険関係は絶対に間違えてはなりません。

今の時代では、税理士が片手間で行える仕事の域を超えています。

お客様と社会保険労務士の関係の深さが強固なほど、従業員も安心して通常業務に務めることができると思います。

弁護士との連携

医療機関で弁護士が登場するケースは、事業承継案件などを除き、それほど無いと思います。

税理士の場合、通常の顧問関係より、相続案件で連携させて頂くことの方が多いのではないのでしょうか。

税理士が非常に助かるのは、連携を上手に行って頂ける弁護士が遺言執行者となっている場合です。

セカンドオピニオンとして、お客様の相続税試算をご依頼頂くことが多いですが、過去に弁護士先生からご紹介頂いた一案件は、下記のような流れでとてもスムーズに進みました。

相続開始前

弁護士先生紹介で税理士が相続税試算

お客様、弁護士、税理士の3者間で打合せ

弁護士が遺言作成(遺言執行者に就任)

相続開始後

弁護士先生が遺言執行

その遺言に沿って相続税申告作成

お客様、弁護士、税理士の3者間で打合せ

遺言執行手続完了、相続税申告完了

仮に申告を含めた相続手続一切を行うのが税理士だけの場合、大きな手間がかかります。

財産の洗い出しからその評価、遺言が無ければ遺産分割協議のシミュレーションも行わなければなりません。

名義変更手続まで委任されれば、その手間は倍増します。

今回は弁護士が遺言執行者となっており、遺言がある時点で原則、遺産分割協議が不要となります。

遺言は基本的に絶対ですが、その内容につき、事前にきちんとした対策が取られていない場合、相続発生後のトラブルの元となります。

今回のケースは、お客様と弁護士先生の間で正確な意思疎通が取れており、弁護士先生は遺言執行により、その業務を粛々と進めることになりました。

相当な手間となる、不動産や預金、有価証券などの名義変更関連手続や、財産目録の作成も弁護士先生(不動産登記手続のみ司法書士)が行うことになります。

税理士は遺産分割協議のシミュレーションも行うことなく、財産評価に専念し、申告書作成を進めていくことになります。

このように士業との間で上手に連携が取れていれば、只でさえ忙しく、かつ、精神的にも厳しいはずの相続人の手を煩わせることも減ります。

その道にも長けた弁護士が遺言執行者となっていたため、3者間にとって有意義な結果となりました。

(但し、弁護士への遺言執行報酬、税理士への相続税申告報酬は、それなりの報酬がかかるので注意は必要。)

遺言や遺言執行者の意義を改めて認識させられた事案でした。

(個人的意見で詳細は述べませんが、遺言に纏わる手続きを金融機関へ任せるのは、私は勧めません。)

まとめ

実際のところ、利害関係の異なる士業や保険会社同士で、同じ方向へ息を合わせるのは難しいケースが多いです。

大半は理想論になってしまうかもしれませんが、その中でも互いに相手を尊重し、歩調を合わせることが、顧問先にとって一番有益な結果を齎すと思っています。

error: Content is protected !!