扶養の定義は所得税法と相続税法で異なる

所得税法上の扶養と、相続税法上の扶養は、それぞれで定義が異なります。

所得税法上の扶養

所得税法で定められている「扶養」の定義は下記です。

扶養親族とは、その年の12月31日(略)の現況で、次の4つの要件のすべてに当てはまる人です。

(1)配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます。)(略)

(2)納税者と生計を一にしていること。

(3)年間の合計所得金額が48万円以下(略)であること。

(4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。

参考:No.1180 扶養控除|国税庁

焦点となるのは、「(2)納税者と生計を一にしていること。」の部分です。

扶養となるためには、納税者と生計一であることが要件となります。

医療費控除なども、生計一親族の分を負担していることが要件となっています。

相続税法上の扶養

相続税法で定められている「扶養」の定義は下記です。

「扶養義務者」とは、配偶者並びに民法(略)第877条((扶養義務者))の規定による直系血族及び兄弟姉妹並びに家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族をいうのであるが、これらの者のほか三親等内の親族で生計を一にする者については、家庭裁判所の審判がない場合であってもこれに該当するものとして取り扱うものとする。

参考:第1条の2《定義》関係|国税庁

上記をまとめると、相続税法上の扶養義務者は、

・配偶者

・直系血族

・兄弟姉妹

・家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族

・三親等内の親族で生計を一にする者

となります。

ゆえに配偶者、直系血族、兄弟姉妹などは生計一であることが求められておらず、この点が所得税法と異なります。

相続税法で注意すべき扶養に関する事項

障害者控除

相続人が85歳未満の障害者である場合、一定の税額控除を受けることができます。

 計算式が、一般障害者が「(85歳-相続時の年齢)×10万」、特別障害者が「(85歳-相続時の年齢)×20万」であるため、控除額が高額になることがしばしばあります。

仮に相続人が3兄弟として、うち1人が障害者である場合を想定します。

遺産分割の状況により障害者である相続人の相続税額から引ききれないケースがありますが、その場合は、他2人の相続人の相続税額から控除することになります。

相続人間が生計一である必要は無く、相互間での扶養の有無も関係ありません。

トータルの納税額が大幅に変わることもあるので、失念しないようにしましょう。

因みに、誰から控除するかは相続人間の話し合いで決めなければなりません。

また、一次相続で障害者控除を適用した場合、二次相続の控除額に影響を及ぼします。

障害者控除適用の際は、当事者間で将来の相続のことも考えて、話を進める必要があります。

未成年者控除

相続人が20歳未満の障害者である場合、一定の税額控除を受けることができます。

障害者控除と同様、扶養の定義に注意する必要があります。

贈与

贈与税の非課税に係る規定に、下記の文言があります。

2 夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの

ここでいう生活費は、その人にとって通常の日常生活に必要な費用をいい、治療費、養育費その他子育てに関する費用などを含みます。また、教育費とは、学費や教材費、文具費などをいいます。

参考:No.4405 贈与税がかからない場合|国税庁

上記同様、この規定の「扶養義務者」は、相互間で実際に扶養している必要はありません。

例えば、祖父母が孫の為に生活費や養育費を支払った場合、仮に祖父母と孫が生計一でなくても、贈与税は課税されないということになります。

孫の親(祖父母の子)に資力があるかないかは関係ありません。

まとめ

所得税の扶養と相続税の扶養を同様に考えると、納税上損をするケースが多くあります。

それぞれで定義を再確認することが重要です。

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