収入が発生する不動産を引き継いだ相続人が、確定申告で注意すべきこと

相続が発生し、被相続人に不動産所得があり、相続人がその財産を引き継いだ場合、相続人の確定申告で注意すべきことをまとめました。

青色申告承認申請書を提出する

被相続人が受けていた青色申告の承認は、相続人には引き継がれないため、相続人は改めて申請書を提出しなければなりません。

その場合、基本的に死亡日の時期に応じて、それぞれ次の期間内に提出する必要があります。

・死亡日が、その年の1月1日から8月31日までの場合…死亡の日から4か月以内

・死亡日が、その年の9月1日から10月31日までの場合…その年の12月31日まで

・死亡日が、その年の11月1日から12月31日までの場合…その年の翌年の2月15日まで

参考:https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm

上記期限までに不動産に関する遺産分割が決まらない場合は、未分割のまま当面共有となります。

確定申告までに分割が決まらない場合は、法定相続分で共有として申告しなければなりません。

その際に青色申告の承認を受けたい場合は、上記期限までに共有者(相続人全員)が青色申告の承認申請書を提出している必要があります。

死亡日前後の家賃が相続財産か否かを確認する

被相続人が不動産収入を得ていた場合、死亡日前後の収入が所得税の対象になるのか、相続税の対象になるのかが問題となります。

この場合、賃貸借契約上の支払期日で判別します。

未収家賃も相続財産となりますが、支払期日が到来していない場合は、相続財産に含める必要がないので、まず支払期日がいつなのか、賃貸借契約書を確認する必要があります。

 例:死亡日7月15日

   不動産収入の賃貸借契約上の支払期日:当月末(当月分家賃を当月支払)

   最後の不動産収入:6月30日(6月分)

上記の例の場合、月初めから死亡日(7月1日から7月15日)までの家賃が未収ですが、死亡した日において支払期日(7月31日)が到来していないため、月初めから死亡日(7月1日から7月15日)までの分は相続財産として計上する必要はありません。(仮に死亡日において6月分の家賃が未収であれば、未収家賃として相続財産に計上する必要あり)

ゆえに7月31日に収受する家賃は相続人の不動産収入となります。(一定の要件を満たす場合は、日割り計算も可能)

参考:https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/02/03.htm

引き継いだ不動産の減価償却に注意する

引き継いだ不動産の取得価額や耐用年数は下記のようになります。

取得日

相続開始日が取得日となります。

取得価額

被相続人が当初取得した際の取得価額を引き継ぎます。

引継日現在の帳簿価額ではありません。

償却方法

新たな取得として償却方法を定めます。

仮に建物を引き継ぎ、被相続人が定率法で減価償却していた場合でも、引継日が平成19年4月1日以降であれば、償却方法は定額法となります。

耐用年数

被相続人の耐用年数を引き継ぎます。

中古資産取得扱いとはなりません。

固定資産税及び個人事業税の課税通知および納付有無を確認する

固定資産税や個人事業税は、所得税及び相続税で扱いが異なります。

所得税では、固定資産税や個人事業税の納税通知により、納付すべきことが確定したときに不動産所得の経費として計上することができます。

死亡前に固定資産税や個人事業税の課税通知が届いたが未納付の場合

準確定申告で全額必要経費算入可能(その場合、相続人の確定申告では必要経費算入不可)

死亡前に固定資産税や個人事業税の課税通知が届き、一部納付した場合

準確定申告でその一部納付分のみを必要経費算入した場合、相続人の確定申告で残額を必要経費算入可能

死亡後に固定資産税や個人事業税の課税通知が届いた場合

準確定申告では全額損金算入不可(相続人の確定申告で必要経費算入可能)

ちなみに相続税申告上の計算では、納税通知発行時期にかかわらず、相続開始日において固定資産税や個人事業税を納付しているか否かで扱いを考えます。

消費税の扱いを確認する

被相続人が課税事業者であった場合、当然消費税の申告も行わなければなりません。

所得税の準確定申告と同様、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に消費税の確定申告書を提出する必要があります。

令和5年10月からインボイス制度が始まり、被相続人がインボイス登録していた場合は下記のように一般的に届出も多くなるので、注意が必要です。

死亡した事業者の消費税及び地方消費税の確定申告明細書

相続開始を知った日の翌日から4か月以内に、所得税については準確定申告書を提出する必要があり、添付書類として付表を提出する必要があります。

消費税については別途、付表7「死亡した事業者の消費税及び地方消費税の確定申告明細書」を添付しなければなりません。

参考:https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/shinkoku/shohi/07/07.pdf

適格請求書発行事業者の死亡届出書

相続人が、被相続人の死亡日の翌日から4か月以内に提出しなければなりません。

この届出書が提出された場合、提出日の翌日に被相続人のインボイス登録はその効力が無くなります。

参考:https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/pdf/invoice_08_01.pdf

相続人のインボイス登録申請

相続人が不動産を引き継ぎ、インボイス登録を続ける場合は、相続人自身がインボイス登録しなければなりません。

実際にインボイス登録されるまでは時間を要するため、登録がされるまでの間(最長4ヶ月)は被相続人の登録番号を利用することが可能です。

課税事業者届出書及び簡易課税制度選択届出書

被相続人が提出した届出(課税事業者届出書や簡易課税制度選択届出書など)の効力は、相続人に及ばないので、相続人が新たにこれらの規定の適用を受ける場合は、改めて税務署へ提出する必要があります。

相続人が免税事業者である場合は、相続開始日の属する年の年末までに簡易課税制度選択届出書を提出すれば、その年から適用を受けられます。(年末までの日数が少ない場合は特例あり)

まとめ

相続税の申告が完了した後でも、収益不動産を引き継いだ相続人の確定申告では、気を付けなければならない点が多くあります。

届出書等の提出を失念するケースが目立つので、期限とともに注意する必要があります。

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