税理士試験受験科目で相続税法を選ぶメリット

先日、顧問先のドクターと会食した際に、税理士試験の科目合格制についての話になりました。

なぜそんな話に至ったのか、お酒を飲んでいてあまり定かではありませんが、できるだけ分かりやすいように簡潔に説明したように思います。(多分)

・税理士になるには5科目受験して合格する必要あり

・簿記論、財務諸表論の2科目は必須

・法人税法、所得税法はいずれか1科目は必須

・その他は選択制(相続税法、消費税法、固定資産税、事業税など)

・一定の大学院を卒業すれば2科目免除

その中で相続税法を選ぶメリットを考えました。

相続税法は興味深い

相続税法を興味深いと表現するのは倫理的に抵抗がありますが、あくまで受験経験者として受験勉強だけを捉えた感想です。

私は大学院免除でなく、5科目合格で税理士となりました。

簿記論、財務諸表論、法人税法、相続税法、消費税法の5科目です。

(所得課税、財産課税、消費課税の3種を学べるので、この選択が一番オーソドックス)

税を扱う人間でありながら、自分にとって簿記論、財務諸表論は特に退屈な科目で、興味も湧きませんでしたが、反面、5科目の中で唯一、相続税法だけは学んでみて関心を持つことができました。

財産課税であり、他の科目とは一線を画すような科目だったからかもしれません。

実際に税理士として業務に携わるとさらに分かりますが、一番実務に即した問題が出題されます。

法人税法は、独立して小規模に事務所経営する税理士にとっては、実務と乖離しているような問題が多いように感じます。

試験で頻繁に出題される適格組織再編など、今後私が人生で携わることはないでしょう。

同じく頻出する圧縮記帳も、申告で使用したのは記憶の中では過去1度だけです。

逆に相続税法で学んだ小規模宅地等の特例や住宅取得等資金贈与などは、実際に何度も適用して申告を組んでいます。

その中で必須である要件の確認作業も、実際に学んだ知識がとても役に立っています。

机の上で学んだ知識が実務で生かせる(そうでないケースも多いですが)のは、なかなか新鮮なものです。

実務で役に立つ

試験問題で必ず出題されるのは、土地評価と自社株評価であり、実務でも頻繁に行います。

土地の評価減(今は無き広大地、セットバック、都市計画道路など)も試験でよく出ましたが、土地評価の際は実務でも必ず考察します。

自社株評価は死ぬほど難しい論点ですが、受験で学んだ知識は、実務で必ず生かせます。

私の尊敬する先輩で、大学院に通いながら相続税法を取得した人がいます。

大学院に通って科目免除を受けられるなら、負担の少ない科目を選ぶのが一般的ですが、敢えて相続税法を選択するところに先見の明を感じます。

その方は、院卒→一般的な事務所→資産税専門の事務所→30歳位で独立、というキャリアですが、まさに理想的な道筋です。

通常の税務顧問と相続について双方精通し、開業して自分のやりたいようにやることができるというのは、税理士を目指し始めた頃の本懐を果たしていると思います。

税理士の中でも相続税法の合格者は少ない

相続税法はあくまで選択制の科目なので、選択しなくても5科目取得は可能です。

選択制の割に学ぶことは多く、多大な勉強時間を割かなければならないので、敬遠されがちです。

過去に勤務した税理士事務所では、資産税専門の税理士事務所を除き、科目合格の中に相続税法を持っている人はほとんどいませんでした。

相続税法に受かっているというのは、それだけで価値があります。

正直、簿記・財表・消費の3科目合格者より、相続税1科目だけ持っている人の方が、希少価値があるように思います。(将来性はともかく)

資産税専門の事務所を希望するのであれば、仮に合格に至らなくても、選択しておいて損はないと思います。

まとめ

私が合格した年は、「物納について答えなさい」というような問題でしたが、物納の理論は長ったらしく覚えづらい印象で、覚えるのに苦慮した記憶があります。

そんな重たい相続税1科目に時間を割くくらいなら、負担の少ない科目に絞って、5科目合格した後に、実務で只管経験する方がいいという意見もあると思います。

正直、その通りです。

資産税専門の事務所であっても、相続税法を持っていない人など大勢います。

ただ、それだけ相続税法に受かるというのは希少であり、そこで細かく勉強した知識は必ず実務で生かせます。

敢えて茨の道を選んだ方は、合格をものにして頂きたいものです。

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