税務調査の観点から診療所が確認すべき事項①(売上)

一診療所に税務調査が入る場合、基本的に過去3期分の元帳を精査されます。

収入、売上原価、費用が主に調査の対象となりますが、当然売上については、漏れた金額がそのまま修正事項に繋がるので、重点的に見られることになります。

ただ、医療機関の場合、日頃の経理を法に則って適正に処理していれば、それほど大きな問題となることはないはずです。

税務調査の観点から、売上について注意すべき事項をまとめました。

保険診療分の未収計上

診療所の場合、まず保険診療分が口座に振り込まれるので、決算月及び決算月の前月分の未収計上をきちんと行っていれば、大きな問題とはなりません。

注意点として、入金予定額を未収計上するのではないということです。

診療が完了した時点で売上が確定するので、査定減を加味することなく、あくまで請求した額を未収計上することが必要となります。

窓口負担分の計上

窓口負担分は正確に計上されているか

税務署が見るのは、基本的に保険診療分より窓口負担分となります。

現金でやり取りがなされるので、漏れが無いかをチェックされます。

レジペーパー等の金額が、日計表の金額と合致しているかなどは、毎日確認する方が良いです。

窓口負担分の金額は正確に1円単位で計上し、それぞれ計上日が分かるよう専用口座に逐一入金するようにしましょう。

とにかく面倒臭がらずに行うことが大切です。

窓口負担分割合についても、診療科目から推定して、入金額から逆算計算で適正か否かを確認するようにしましょう。

クレジットカードや電子マネー決済の場合

医療機関でも、窓口負担分がクレジットカードや電子マネーで決済されているケースは増えています。

その場合、決算月を過ぎて入金されることが多いので、漏れの無いよう忘れずに計上するようにしましょう。

在宅医療を行っている場合

在宅医療を行っている場合、窓口負担分の回収が外来メインで行っている診療所と異なります。

現金受け渡しの場合、訪問の際に前月請求した金額を預るケースが多いので、その場合は窓口負担分の未収計上を行う必要があります。

(在宅療養支援診療所の場合、通常1ヶ月に2度訪問なので、請求のタイミングを要確認)

また現金受け渡しでなく、金融機関等の集金代行サービスによる口座自動振替制度を使用していることも多いです。

その場合はまず、実際に診察した患者の窓口負担分がいつ口座入金されるのかを確認する必要があります。

計上の際は、下記の理由により、実際に口座入金される金額を未収計上してはいけません。

代行業者から口座振替に係る明細が発行されると思いますので、その請求額(純額でなく総額)を計上するようにしましょう。

・口座振替の際に手数料が差し引かれて入金されるため

・患者の口座残高不足で、自動振替されないことがあるため

・在宅医療の場合、患者が亡くなるケースもあり、口座が凍結され自動振替されないことがあるため

期末未収計上

前述の通り、診察や健診等を行った場合は、その期の売上として計上しなければなりません。

ゆえに決算月に診察や健診等を行った分が翌月以降に入金される場合は、漏れなく計上する必要があります。

主たるものとして下記が挙げられます。

自賠責保険

医療機関が損害保険会社に請求した金額の計上が求められます。

すぐに入金されないケースも多いので、請求金額を把握しておくようにしましょう。

医師会や自治体による委託事業

医師会や自治体による委託事業は、入金が遅い場合が多く、場合によっては半年後位になることもあります。

翌月の通帳入金額を確認するだけでなく、実際に請求する金額を計上するようにしましょう。

その他

証明書、診断書等の文書料は翌月入金となるケースが多いです。

また、個人診療所の場合、医師会からの受託で輪番制のよる収入がある場合があり、給与所得の扱いでないケースがあります。

輪番制による報酬も、入金が遅い場合があり、金額も多額なこともあるので、忘れぬよう計上することが必要です。

まとめ

売上に関しては、未収計上分が要注意事項となります。

漏れの無いよう確実に計上することが肝要となります。

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