今年の税理士試験が終わりました。
税理士であれば、各予備校から税理士試験の解答速報が発表されると、今年の問題はどんなものだったか、検索する方も多いと思います。
税理士試験が終わると、各予備校が合同就職説明会なるものを開催し、税理士事務所がこぞって参加して、有望そうな従業員の採用を目指します。
私も就職の際に参加していましたが、もう15年位経つので、今どのようになっているのかは不明です。
税理士事務所勤務時代に、採用担当として参加したことがありましたが、私が就職した頃に比べ、年々参加者が減少している印象でした。
税理士試験受験者数が毎年軒並み減っていることを考えれば、今年も売り手市場なのかもしれません。
受験生にとっては将来を決める大切な就職なので、情報誌や各事務所のホームページ等をきちんと吟味して、悔いのない選択をして頂きたいものです。
20代~30代前半の方向けで、税理士事務所の選択について考察しました。
(あくまで私見です。)
自分の置かれている立場を考える
税理士試験科目合格者で2~3科目以内、かつ、税法(国税三法と消費税)をまだ勉強していないのであれば、正社員として就職することはあまり勧めません。(年齢や家庭環境によりますが)
税法を全く勉強していない段階で就職しても、税理士事務所が戦力として考えてくれるか分かりませんし、そもそも顧問先担当になっても顧問先に迷惑もかかります。
仮に担当になって、実務経験を積んでも、将来的な税理士資格取得のための勉強を並行して行うのは並大抵の努力では難しいと思います。(努力でどうにもならないこともある。)
簿財2科目程度で就職して、仕事に忙殺され、結果的に資格取得を諦めていった人を何人も見てきました。
一度目指した目標であれば、最後まで志を貫き通してほしいものです。
大学院へ行くことが可能なのであれば、通学に理解のある事務所へ就職して、税理士資格を取るという選択肢もあります。
家庭環境、科目合格数、年齢、資力、周囲の理解など総合的に勘案して、今後の辿る途を考えたいものです。
資産税に特化した事務所へ1度は勤める
この業界にいれば、資産税専門を名乗る事務所を数箇所は挙げることができると思います。
言うまでもなく、少子高齢化時代は続き、合わせて資産税の需要は今後も続きます。
独立して実感しますが、頼まれてセカンドオピニオン的に相続税試算をするケースが往々にしてあります。(相続税申告を行ったことがない税理士は、結構います。)
仮に相続税に不慣れな税理士が申告書を組んだとしても、相続税還付を行う事務所によって裏で指弾されることがあり、かえって顧客の不審を買う形となります。
相続税還付を専門にするような税理士もいますが、税務署、税理士双方を敵に回すような行為なので、色々と目は付けられるようです。
ただ、土地評価をするにあたり、路線価に㎡数をかけただけ、現地調査も役所調査もしないような申告書では、相続税還付が業務として成り立つのも無理のないことです。
顧問先担当を持つ方なら分かると思いますが、どの顧問先でも相続税の相談を1度は必ずされると思います。
そこで、「専門外なので分かりません」では信頼を失うので、最低限の知識は持っておきたいものです。
個人事業主であっても、法人の代表であっても、経営者であれば将来的な相続も考えながらの運営は行っているはずであり、そういう意味では法人税、所得税と相続税は一体で考えなければなりません。
膨大な資産を保有する方の相続税申告や、複雑な事業承継が絡むような案件であれば、むしろ資産税専門税理士の協力を仰ぐべきですが、担当者であれば将来的な顧問先の行く末はともに考えなければなりません。
通常の税理士事務所で相続案件に携われる可能性は、年に1回あるかないかです。
1度は資産税を専門にしている事務所へ就職することを勧めます。
相続税の申告書の組み方を知るだけでも、その後の自身の付加価値が全然異なると思います。
できるだけ転職する方がいい
私は過去に、小規模、中堅、準大手の3箇所(順不同)の税理士事務所で勤務していました。
従業員として勤務していれば、それぞれ良いところ、悪いところを感じることになります。
この業界で一つ言えるのは、各事務所で特殊なローカルルールがあることです。
税理士業界自体、閉鎖的な業界であり、今はだいぶ改善されているのかもしれませんが、私が業界に入り始めた15年前は、特殊なしきたりが沢山ありました。
それこそ小説にでもしたら、それなりに売れるのではないかというようなことが日常茶飯的に行われていました。
事務所に入ってしまうと、それが当たり前になるのが恐ろしいことでもあり、今考えれば笑い話にもなりません。
少しでも事務所の体質が合わないと感じたら、過度な我慢は禁物です。
「就職したら3年は我慢しろ」という昭和的思想が未だに蔓延っているのか知りませんが、
従業員を辞めさせないための方便に過ぎません。
税理士事務所は、その事務所によって方針や経営がまるで異なるので、独立を考えるのであれば、むしろ転職を複数回して、様々な経験を積む方が有利のように感じます。
従業員としての事務所勤務経験が3箇所・延べ10年近い私が言うのも何ですが、「薄く長く」ではなく、「濃く短く」の方が、今後の税理士人生で糧になります。
(要はその事務所で学んだことを、今後においてどう生かせるか)
できれば何かしらに特化している事務所に勤めることを勧めます。
その業界のノウハウを習得することができるので、それが他の人にはない強みになり、さらに磨けば大きな武器になります。
まとめ
20代、30代の若い方向けに、税理士事務所の選択方法について私見をまとめました。
少しでも参考になれば。