税理士試験を終えて10年経って思うこと

税理士試験を終え、自分の名前が官報に載ってから、今年で10年を過ぎました。

毎年、盛夏を迎える時期になると、自ずと税理士試験を思い出します。

精神が矮小とはいえ、あれから10年も経つのに、未だに試験に纏わる夢を見ます。

試験会場で試験問題を見て硬直する夢、電卓を忘れて慌てふためく夢、結果落ちた夢。

その日は朝から気鬱になります。

今振り返れば、社会人という立場ではありましたが、なりふり構わず試験勉強に重きを置いていたので、落ちた時の精神的な気持ちの低落は言葉で表現できません。

周りからの同情はまだ有難くもありますが、自らの責任とは言え、無言の憐憫、軽侮の視線は精神的に応えるものがあります。

今年の税理士試験が近づいています。

私は独立前に3箇所の税理士事務所に勤めていましたが、その全ての事務所は、良くも悪くも一長一短でした。

過去の勤務先で学んだことが、現在私が運営している事務所の模範になっていることもあれば、反面材料にしているところもあります。

本当に感謝している面もあれば、速やかに改善すべきだろうと思う点もあります。

ブラックな会社というのは、人によってその捉え方が異なります。

私が過去に勤めていた事務所がブラックだったかどうかは、YesでもありNoでもあります。

現在、いわゆるブラックな税理士事務所に勤めていると感じている受験生(主に20代~30代前半の方)向けに思うことを書きました。

この業界では税理士資格は必須

この業界に長く籍を置くつもりなら、何よりも税理士資格を取ることが先決です。

税理士業界で食べていきたいなら、それが大前提です。

資格取得を目指す上で、挫折した若しくは諦めたのであれば、早く転身する決断が必要です。

漫然と税理士事務所に勤務するより、一般企業に就職する方が、よほど未来があります。

税理士事務所業界について詳しく述べることはしませんが、実際に入ってみればこの業界にどのような特徴があるかは分かるはずです。

この業界に身を置くのであれば、「今」だけではなく「未来」を常に考えたいものです。

この業界の悪しき慣習の一つは、税理士資格を疎略に扱い、仕事だけこなすことを一義的に考え、試験勉強を後回しにする人の一種の徒弟的な思想です。

若い時に仕事に没頭することは、私はむしろ賛成ですが、受験生の立場である人間が、資格の為の勉強を蔑ろにして、仕事だけに傾注することにどれだけの意義があるのかは考え物です。

果たしてそれが自分や顧問先の為になっているか、自分の為でなく勤務先の事務所の為だけになっていないかを考える柔軟さは兼ね備えたいものです。

事務所が、ある程度自分の将来を保障してくれるなら構わないと思います。(例えば、事務所の後釜になることが決まっている場合など)

ただ、そのようなケースは稀有でしょう。

上の人間が昭和の丁稚奉公制度を未だに引きずっているケースが多く、事務所内でそういった雰囲気が蔓延しまうと、無資格者でありながら忙しい自分に陶酔する人間が湧いていきます。

そして無駄に年月のみが経っていきます。

大手の会計法人であればいざ知らず、従業員に無資格で働くことを強圧する税理士事務所に尽くして、どれだけ光明があるのか。

独立することがリスクと考えるなら、無資格でブラックな税理士事務所に勤務し続けることも同様でしょう。

税理士事務所内での立ち振る舞い

受験生なら、間違っても事務所内での評価を上げようとして、仕事量を増やさないことです。

税理士事務所内で貢献しても、あくまでその税理士事務所内でしか称賛されません。

(それで給料が飛躍的に上がるなら話は別ですが。)

ブラックな税理士事務所にとっては、将来的に独立するかもしれない有資格者よりも、無資格者に一定給で勤務してもらう方が、都合が良いものです。

受験生なら目立たない振る舞いを心掛け、クビにならない位で立ち回る器用さも必要と思います。(仕事を自分の範囲でこなすのは大前提)

定時で帰る人への風当たりが厳しい業界ですが、当たり前のように定時で帰り、それで面罵されても構わない位の神経は備えたいものです。

少なくとも仕事の忙しさを自己弁護の盾にして、愚を犯さないようにしましょう。

ただ、事務所が資格取得の勉強時間確保へ一定の理解を示し、仕事量を調整してくれるのであれば、給与額へ文句を言ってはいけません。

最低限の仕事しかこなせないならば、給与及び賞与がそれ相応になるのは当然のことです。

仕事をしたいのであれば、まず資格を取ってから好きなだけ働けばいいだけの話です。

とにかく順番を間違えないことが大切です。

資格取得後、過去の分を取り返すように事務所に貢献し、加えてその経験を自分の血肉にする方がよほど賢明です。

担当件数が増えれば増えるほど、各顧問先へのサービス低下に繋がることも考えたいものです。

普段の仕事量に根を上げていたら、勉強時間確保などできるはずがありません。

仕事による影響は、物理的な面だけでなく精神的な面でも自身に響くものだからです。

仕事量が多いなら、上司に言い合って仕事量を減らしてもらうことです。

取り合ってくれないなら、早期に退職しましょう。

正直、昔はどこの事務所も試験勉強に理解を示すところなど少数でしたが、今は勉強時間確保に理解のある事務所は増えていると思います。(多分)

若かりし頃、「一つの勤務先には3年は我慢しろ」と、合言葉のように言われていましたが、今の時代では看過できない野蛮な思考であり、合わない事務所に居続けて精神を壊したら誰が責任を取ってくれるのか考えましょう。

大学院へ行ける環境であれば早く行く

大学院へ行けるだけの資力と周りの理解があるなら、早く通う方が賢明です。

いつ受かるかも分からない試験に、大切な人生を費消するのはあまりに非効率です。(一部の秀才を除いて)

私は5科目受験により税理士となりましたが、今考えれば早めに大学院へ行っておくべきだったと思う日もあります。

先見の明がある方は、大学卒業とともに大学院へ通い、科目免除を目指す宛ら、他の科目受験も終わらせ、若いうちに資格保有してしまっています。

私の尊敬する諸先輩は、大抵20代前半で資格取得を済ませ、20代の内に複数の税理士事務所で様々な経験を積み、30歳前後で独立しています。

先のことを考えている人は、それだけ見えている景色が異なるものです。

まとめ

・税理士業界で働き続けたいなら、何があろうと税理士資格を保有する(若いうちに)

・税理士資格を諦めるなら、早く決断して一般企業に就職する(若いうちに)

上記はあくまで私見ですが、20~30代の若い方向けに少しでも参考になれば幸いです。

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