医療法人が役員借入金(役員から医療法人への貸付)を有しているケースがあります。そのデメリットと対処法をまとめました。
(医療法人が役員貸付金(医療法人から役員への貸付)を有しているケースはこちら)
役員借入金のデメリット
相続財産になる
理事長が医療法人に貸付を行っている場合、基本的にその貸付金は理事長が亡くなった際に相続財産となります。
すぐに返済することが難しい額の場合、相続税納税に大きな影響を及ぼすので注意が必要です。
相続税法上、回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるときは、貸付金として計上しないという規定もあります。
参考:国税庁 第3節 定期金に関する権利|国税庁
ただ、過去の判例でも、貸付金が相続財産にならないというケースはほとんどありません。
債務超過状態の法人への貸付でさえ、回収可能性が少しでもある場合は、額面通りに相続財産として計上すべきという判断がされています。
債権回収のために何を行ったかなど、納税者側が客観的に立証する必要があるので、相続財産として計上しないことはかなり難しいことになります。
参考:国税庁 13136.pdf
また、貸し付けている本人(主に理事長)が気付かないうちに、医療法人への貸付額が多額になっているケースはかなり多いと思います。
相続はいつでも起こる可能性があるので、自らの貸付がいくらになっているのかは普段から把握し、現状の債権額を踏まえ相続税試算まで行うことを勧めます。
基金拠出型医療法人の場合、基金も相続財産になるので、併せて確認する方が良いです。
少なくとも、相続により残される相続人の負担は常に考えるべきと思います。
金融機関の評価が下がる
役員借入金があるだけで金融機関が貸し渋ることはあまりないと思いますが、役員借入金が多額ということは、損失が多額で資金繰りが危ういことが想定されます。
あまりに多額の欠損がある場合、例え売上規模に問題が無くても、医療法人経営の安全性を疑われても仕方のないことです。
金融機関にとっては回収可能性が何より大事であり、役員借入金が多額であれば、審査が厳しくなるのもやむを得ないと思います。
役員借入金の対策
役員借入金が貸借対照表に計上されている場合、まずその実態が適正な役員からの借入であることを確認する必要があります。
そのことを前提として、解消方法や相続対策は主に下記があります。
(医療法人が理事長から借り入れている場合を想定します。)
役員報酬を下げる
医療法人の場合、売上を見誤り役員報酬の金額を上げ過ぎたことにより資金繰りが滞り、役員借入金が増えていくことが多いと思います。
御子息が医学部を目指している場合など、学費を含め一定の資金が必要となるので、医療法人の損益と個人の必要資金のバランスを考えながら、報酬額を設定しなければなりません。
債権者による債務免除
療法人に貸し付けている役員が債務免除することにより、役員借入金を解消する方法です。
役員借入金が多額にある法人は多額の欠損を抱えていることも多いので、債務免除による利益が発生しても、たいていは欠損金と相殺され納税が発生しないと思います。
一点、経過措置型医療法人の場合は、みなし贈与に注意する必要があります。
仮に理事長(A)と理事(B)が50%ずつ出資を保有している医療法人で、理事長が医療法人への貸付を免除したケースを想定します。
債務免除額が多額であれば、純資産価額が上がるため、各出資者の出資持分評価額も上がることになります。
理事長(A)の行為により、債務免除に何も関与していない理事(B)の持分評価額が上がることになるので、理事長(A)から理事(B)への贈与があり、贈与税が発生する可能性があります。
仮に債務免除を検討する場合には、議事録などの書類整備は当然ながら、税務署や都道府県等に指摘されるリスクも想定しなければなりません。
暦年贈与する
借入金の解消とはなりませんが、理事長から推定相続人へ債権を贈与する方法です。
理事長に万が一のときがあったときに相続財産が減る形となります。
ただ債権が無くなるわけでなく、次世代に先延ばしになっているだけなので、いずれまた対策は必要となります。
まとめ
役員借入金も、多額に計上されることは好ましくはありません。
たいてい、医療法人が欠損で資金繰りに窮した場合に役員から借り入れていることが多いので、経営方針や役員報酬の見直しで対策を打つことが望まれます。










