診療所経営をしているのであれば、業績の良否に関わらず事業計画書の策定は必要です。
「現状で売上が伸び続けているから事業計画は不要」という考えは危険です。
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次年度の売上予測はできるだけ厳密に
損益や資金繰りを左右するうちの一つが、年一度の役員報酬改定と思います。
前年度実績と次年度の売上予測をもとに改定するケースは多いと思います。
売上が上がりそうであれば役員報酬を上げ、下がりそうであれば下げるというのは当然ですが、他にも考察すべき要素があるのであれば、それも考えていかなければなりません。
事業計画の段階で損益を想定し、節税効果が期待できる報酬設定を行うことは当然です。
それ以外の検討要素として、報酬の手取りがいわば生活費となるので、家庭状況やプライベートの支出も考え、報酬額の設定を考える必要があります。
医療法人で役員借入金や基金残があるのであれば、その返済も同時に考えなければなりません。
その他多額の設備投資や分院・移転を伴う定款変更などを考えるのであれば、相応の資金を残す必要があります。
そうなると前年度や前々年度の売上や損益推移を見ながら、次年度の予測を立てるのが現実的ですが、次年度の売上と損益予測は、可能な限り厳密に行うことが求められます。
最低限、次年度の損益予想表は作成するようにしましょう。そもそも作成しないと、適正な役員報酬設定が出来ません。
理想でなく現実を考える
次年度の売上予測をする場合、できるだけシビアに考えることを勧めます。
コロナを経験しているドクターであれば分かると思いますが、長く経営していれば患者数には増減が必ずあります。開業後ずっと増収し続けることなど、なかなかできることではありません。
「来年度は増患しそう、売上が上がりそう」といった理想論でなく、なぜ患者が増えるのか、売上が上がるのかという根拠をまず考える方が良いです。
昨今の診療報酬改定傾向と物価高を考えると、利益を伸ばすことは今後もかなり難しくなるはずなので、まず現実を受け止めることは大事です。
経費に無駄がないかを考える
売上を伸ばすことが大事と考えるのであれば、無駄な経費を削減するのも大事です。
主にどのような経費削減が考えられるかを確認しましょう。
過大な設備投資
高額な医療機器を購入する場合、診療所にとって絶対の需要があるのであれば検討しても良いですが、得られるべき診療点数と比較し、本当に必要であるのか確認が必要です。
医療法人であれば、損益推移以上に資金繰りの方が大切なので、高額な医療機器を購入する際は、損益予測だけでなく収支予測も厳密に行う必要があります。
資金繰りだけを考えるならば、購入でなくリースの方が好ましいので、多角的に考えられる柔軟性も必要です。
生命保険の見直し
売上が下降傾向にあるのであれば、現状加入している生命保険について、法人・個人双方の面で見直すことを考えましょう。
明らかに経営を圧迫しているような支出を毎月行っているのであれば、解約を検討していく必要があります。
ただ、現在では購入できないような商品もあったり、積立型であれば将来の退職金原資でもあるので、解約する場合は、解約返戻率の状況も見ながら、慎重に検討する方が良いです。
生命保険解約は、資金繰り解消のための最後の手段として考える方が良いかもしれません。
士業やコンサルへの報酬
診療所が支払う報酬は、税理士、社会保険労務士、弁護士、行政書士などが考えられますが、その報酬の金額がサービス内容と比較し、見合っているかを考えましょう。
報酬の金額と面談回数や面談内容等に釣り合いがあるか、今一度考えることを勧めます。(自戒も含め。)
広告会社等への手数料
求人のため広告会社へ手数料を払うケースなどがあります。
広告会社への手数料は多額になることも多く、多額の出費をして入職した職員に短期で辞められると、費用対効果を考えればかなりの損失になります。
場合によっては、長く真面目に働いている従業員からの不興を買うこともあるので、支払う前に慎重に検討する方が良いです。
投資
金融機関などが、過剰とも言えるような節税と名を打つ商品を紹介することがままあります。
そのような商品は、業績が良い時は検討の余地がありますが、業績悪化の際は、経営をさらに落ち込ませる悪手となり得ます。
担当者が本当に信用できる人間か、見定めも必要です。
まとめ
業績は、ドクターの腕に関わらず、常に悪化する可能性があることを考える方が良いです。
明るい未来を語るのは良いことですが、常に最悪の状況も考えられる柔軟性も必要です。
そのため、事業計画の作成や見直しは常に必要なのです。